元過労死ライン越え教師 Yb の日記

元過労死ライン越え教師が教育などについての考えを綴ります

○教育現場の現状は? Part 9 先生の仕事って?⑥ ~放課後~

○教育現場の現状は? Part 9 先生の仕事って?⑥ ~放課後~

 

 先生は児童が帰った後、どんな仕事をしているのでしょうか。これは、児童自身も保護者も気になるかもしれません。しかし、ここの説明はとても難しいです。表現がよろしくないかもしれませんが、児童の在校時間にできなかったことをしているというのが正しいかもしれません。教員の仕事は多岐に渡ります。授業準備からテストの丸付け、保護者対応や打ち合わせ、研修、そういった想像のつきやすいものから、会計や行事の計画書作り、特別教室の管理や校内の危険箇所や修繕の必要な箇所の確認、戸締りや警備の設定など本当に細かい雑用まで全てです。理科主任なら理科準備室の整理や体育主任ならプール管理などもここに含まれます。プールの水が出しっぱなしだったり、抜けてしまったり、そう言ったもので教員に賠償を迫る自治体があるというニュースが話題になったことがありますが、そういった仕事も割り振られているのが実態です。こう言った仕事を児童がいる時間だけで終わらせるのは難しいです。特に成績付けなど児童に見られると困るものや保護者に対してや教育委員会に提出する書類、指導案など深く考える必要がある資料作成などについても児童がいるところで作成するのが困難なものもあります。それを片付けるすごく万能な時間が放課後になります。

 しかし、この放課後は厄介な点がいくつもあります。その数は数え切れないかもしれませんが、ここではざっと七つの問題点に触れていこうと思います。

 一つ目は、時間がとても短いということです。児童は授業が終わったら勝手に帰ってくれるわけではありません。帰りの会や下校指導などは教員が関わらなければならないものです。それを終えてから仕事にかかるとなると、大体五時間授業の時であれば、午後三時から、六時間授業とならば四時からが放課後の仕事時間となると思います。定時は私の場合四時四十分ということが多いので、五時間目授業の時なら一時間四十分間、六時間授業なら四十分間が放課後の仕事時間となります。しかしながら一見五時間授業の方がゆとりがあるように見えてそうでない場合があります。共通認識として「五時間授業の日の放課後は時間があるよね」となってしまうので、職員会議や研修、はたまた何かの仕事がそこに割り当てられており、それが終わるのがよくて定時ギリギリ、悪いと定時を超えてしまう場合もあり、意外にも五時間授業の日の方が放課後の時間がないなんてことにもなります。

 二つ目は、行事の準備に駆り出されることです。先ほども言ったように放課後はほとんどの教員が共通して時間があるという認識があります。特に五時間授業の時は顕著に仕事が割り当てられているということもあります。そう言った認識があるので、行事の準備などもこの時間に割り当てられていることが多いです。例えば、運動会のテント建てや線引き、新体力テストのソフトボール投げのための線引き、お祭りなどの道具の用意など学校の行事の用意の中で教員が行わなければならないことのほとんどがこの時間に行われると言ってもいいかもしれません。物によっては、「それ児童と一緒にできたよね?」や「それ児童に手伝ってもらった方がよかったんじゃない?」と言った内容のものさえもこの時間の教員だけで行うこともあります。

 三つ目は、みんな空いている時間だと思っていることです。先程から何度も登場していますが、教員も保護者も放課後という時間は教員が固定の仕事がない時間だと認識している場合が多いです。それによって職員会議や行事の準備、そして何かあるとこの時間に同僚や上司は仕事を設定してくることがあります。また、保護者も同様です。「放課後ちょっとよろしいでしょうか。」といった連絡帳でのやりとりがあったり、放課後に電話をかけてくる保護者も少なくありません。確かに、保護者にとっても一番連絡しやすい時間帯であることは確かなので、そこは決して保護者の方が悪いわけではなく、致し方ないことですし、むしろこの時間以外に電話をかけてこられても教員も困ってしまう場合が多いので、よく考えていただいて逆にありがたいことでもあります。しかし、保護者や教員に限らず、どんな人もこの時間は空いていると認識しているとそこにどうしても仕事が集まりがちになってしまうのです。

 四つ目は、疲れているということです。人間は機械と違い疲れといった感覚があります。ですから、いつでも同じ時間があれば同じようなパフォーマンスで仕事に向き合えるわけではありません。放課後はここまで説明してきたような多くの業務をこなし、無事児童を帰宅させることができた後の時間です。その時間のパフォーマンスと朝起きて少ししてからのパフォーマンスに違いがあるかどうかと言えばもちろん違います。つまり、この時間は多くの細かい作業や頭を使う作業を行うことができますが、その時にはもうすでに疲労が多く溜まっており、どんな業務であろうと万全の体制ではないということです。時間も多くかかるでしょうし、頭も働いていないタイミングなのです。

 五つ目は、急な保護者対応や翌日のための児童指導があると放課後全てを使っても終わらないことです。長い間この職に就いていれば、自分に非があるにせよないにせよ、急な保護者対応や児童指導が発生するものです。分かりやすいもので言えば、友達同士のトラブルで保護者からお話があったり、児童のいじめについて翌日どう対応するかといったことがありますし、場合によっては児童相談所案件のものでケース会議ということだってあります。正直学校外の問題でしょ?と思うような内容でも、それが学校生活に関わってきてしまったり、児童の命に関わる問題であれば動かないわけにはいきません。そういったものも児童が在校している時には話し合いは難しかったりします。そういった話し合いは決まって長い物ですから、そういったものであると放課後はないと思った方がいいし、むしろ定時どころの騒ぎではないほど遅くまで話し合いが行われることも珍しくありません。

 六つ目は、若い教員は手伝いをさせられることです。私はこの業界に入った当初先輩からこのような話をいただきました。

「ベテランの先生方は多くの仕事をこなすことができる。でも、若手の先生方はそれに比べて貢献できることは少ない。だから、少しでもベテランの先生のお手伝いをして若手も力になるべきである。」この考え方に私は一理あると思っています。多くの先生方ができること、得意なことを率先して行うことでより現場が回りやすくなる。例えば、若手はベテランのような立ち回りをすることは難しいですし、少ない時間で多くの仕事をこなすことは特に初任などにおいてはまず無理だと思います。だからこそ、そこはベテランの力に頼る。しかし、ベテランは体力的にも衰えてきていたりしますから体力仕事は難しい時があるかもしれません。そういった面で若手の方が体力や力がある人も多いでしょうからそこは率先して動く。もちろん、例外もあるでしょうが、ある程度わかる理論だなとは思います。しかし、これはやる本人の、ベテランならベテランが若手の分も頑張ろうとか、若手ならベテランの先生の力になって頑張ろうとか、やる本人の気持ちや考え方の指標なのではないかなと思います。これが手伝ってもらう側の考えになると危険です。若手が難しいことは私たちはできないからベテランがやれよとか、力仕事は若手がやれよという考えでやってもらっていては空気として悪いものがあります。よくいう『お客様は神様』というのは店員サイドがお客さんを丁寧に扱うという気持ちの問題であり、これを客側が要求するのはおかしいという問題と同じだと思います。しかし、私はこの業界でも同じ問題が発生していると思います。ベテランが若手にただただ雑用を押し付けたり、その雑用時にいなかった若手を「私の若い頃は」といった枕詞を使った上で悪口の対象とする姿が蔓延しているように感じます。

 七つ目は、職員室での雑談会が行われると仕事が捗らないということです。確かに教員同士の情報交換は必要です。「〇〇くんが怪我をしていたけど担任が知らなかった」や「△△さんがこんなことをしていた」と言った情報が児童指導の面や児童理解の面などで大きく有用になることもありますし、保護者対応の時に他の先生は知っていたけど、担任が知らなかったなどといったことで大きな問題にもなりかねません。また、普段からコミュニケーションをとっておくことで咄嗟の時に動けることもあります。純粋にある程度の関係になっておくことで助け合おうという感情が生まれてくるのも事実ですし、仕事をする上で得意不得意などが分かり、円滑に業務を行えるようになることもあるでしょう。しかし、それにしてもです。その時間に多くの時間がとられていては問題です。先輩からの話をPCをカタカタやりながら聞く態度も気に食わないという先輩もいらっしゃるでしょうし、ある程度仕事の手を止めたり、その時間にしたかった仕事ができなくなることも想定されます。特に時間が遅くなってくるとみんな疲れてきて手を休めたくなり、よくわからない雑談会によって時間がとられてしまうということもあります。職員室内で全くコミュニケーションを取らないのも問題に繋がりますが、とりすぎて時間がなくなるのも大きな問題なのです。

 ここでは、放課後の厄介な点として七つ紹介しましたが、正直これだけではないと思います。しかし、全てを挙げていると途方もなくなってしまうので、今回はここで止めたいと思います。つまり、何を言いたいかと言えば、大きく二つです。一つ目は放課後は万能ではないということ。二つ目は、放課後に長く職員室で過ごしたり、在校時間が長かったりすると仕事が進むのではなく、むしろやらなかったはずの仕事が増えているなんてことも起きかねないということです。正直厄介以外の何者でもありません。

 重要なことは、放課後の時間が短ければ短いほど仕事は少なくて済むのです。定時退勤すると、さらに定時退勤しやすくなるということです。

 こう(2023.)は『結局、定時退勤が子どもたちのためになる』の中で

”「定時で帰ると決め、定時が来たらとりあえず帰る」”

”実は、仕事なんて、「やろうと思えばどこまでもできてしまい、正確な終わりなんてやってこない」というのが実態”

と示しており、これは定時で帰る。つまりは、放課後に長時間残ることが更なる長時間労働につながることを示しています。

 

 このように教員の放課後は短くまとめることが難しいほどにやることや行う内容などが広範囲にあったり、複雑な事情が絡んでいたりする厄介な時間でもあります。その反面、この時間にしかできないこと、この時間を有効活用することで自由度の高い業務を行うことが可能なことも事実です。

 ちなみにここでは書くつもりはありませんが、教員によっては、休日も放課後と同じような仕事を行なっている人もいます。仕事が終わらないからやその時間じゃないとできないなんてこともあるかもしれません。しかし、この章で教員の方も教員でない方も教員がどういった仕事をしているのかを理解することができたのではないでしょうか。

 

参考文献 こう(2023.),結局、定時退勤が子どもたちのためになる,明治図書.

 

 

 

○教育現場の現状は? Part 8 先生の仕事って?⑤ ~給食と清掃~

○教育現場の現状は? Part 8 先生の仕事って?⑤ ~給食と清掃~

 

 教員の一日は授業や休み時間以外にも様々な時間があります。今回は給食と清掃の時間について触れていきたいと思います。

 給食の時間は分かりやすいと思います。給食の配膳、給食中の児童の様子確認や必要ならば指示や指導を挟みます。そして、片付け、歯磨き等をさせる時間です。ここでほとんどの企業等と異なる点はここは労働者にとっての休憩時間ではないということです。給食指導と言われますが、自分は食事中ゆっくり食べている暇もなければ、味わっている暇もありません。教員にもよりますが、掻き込んで食べて、児童の指導を行ったり、丸付けなどの作業を行う人も少なくないようです。しかし、給食中最も気をつけなければいけないのはアレルギー対応です。近年アレルギーの児童は多くいます。給食の対応が必要な場合はもちろん、自分で除去することができる児童も注意して見守る必要があります。しかしながら、学校に申請のないアレルギーの児童も少なくありません。教員の方から病院で証明書をもらって欲しいということを伝えても重度でない場合は病院すら行かず、なんとなくこれがダメな気がするレベルで済ませてしまう保護者もいらっしゃるので、その場合は児童の話を聞いてアレルギーを引き起こしそうな場合は食べないよう促したり、入っていることを伝えたりといった作業が必要となります。よく完食を目標とする教員がいます。それも食品を無駄にしない素晴らしい意識だとは思いますが、私が残してもいいよと指導しているのは、こういったアレルギー対応が難しい児童の対応を行なっている経験からくるものです。

 清掃の時間も比較的分かりやすいのではないでしょうか。児童が教室などの清掃をするのを監督する時間です。教室の机運びなどは机を倒して足を怪我したりということもありますので安全管理が必要になってきます。また、児童によっては掃除に対して前向きでない場合もあります。掃除をせずにサボってしまう児童をやる気にさせたりもします。

 ここでもう一つ、掃除の時間には重要な点があります。それは、文部科学省から出ている資料では、清掃は『必ずしも教師が担う必要のない業務』だということです。では、そのための人員は用意されているのでしょうか。答えはNOです。学校の業務ではあるとの位置付けのある清掃活動は教員以外やってもいいのだけれど、その人員は用意されていない。つまりは教師がやるしかないということになります。誰もやる人がいないが、学校の業務であるならば、学校にいる人員である教師がやる必要があるということに他なりません。もはやこれではこの文言の必要性も疑うべき状態です。

 では、実際問題どうしたらよいのでしょうか。中村 健一(2023.)の『策略-ブラック仕事術 誰にも言えない手抜きな働き方』では、「汚い教室は、荒れやすい。学級崩壊予防のために、教室はきれいに保つ。』という文言があります。清掃の時間に手を抜き、児童指導を怠ることは、結果的に学級崩壊などの大きな仕事の増加を招く危険性があります。だとするならば、諦めて掃除の指導を教師が引き受けるしかないのでしょうか。私はそこはバランスなのではないかと感じています。清掃の班が変わった最初は力を入れて指導をし、中盤になったら児童主体でできるようにする。慣れてきて手を抜くようになったらまた指導をする。つまりは、べったり清掃の時間指導をするのではなく、要所要所で指導を行い、あとは他の業務などに当たることが得策なのではないかと思います。気になるところはさっと教員がやってしまうのも手です。いかに指導しようと全てを完璧に児童が行うのは限度があります。その細かさが嫌で清掃に前向きに慣れない児童も少なくありません。

 

参考文献 中村 健一(2023.),策略-ブラック仕事術 誰にも言えない手抜きな働き方,明治図書.

 

 

○教育現場の現状は? Part 7 先生の仕事って?④ ~授業と休み時間~

○教育現場の現状は? Part 7 先生の仕事って?④ ~授業と休み時間~

 

 授業中にやる仕事は言うまでもないかもしれませんが一応触れておきたいと思います。授業中は児童の学びを進めたり、学び合いを補助したりという場面です。学年にもよりますが、一日に5コマから6コマあります。小学校だと自分の専門科目以外もほとんど全ての授業を行うことになりますので、授業準備はその教科と向き合おうとすればするほど困難なものになってきます。年度の初めに苦手な教科を聞かれ、そこでできれば他の先生に出ていただきたい教科を伝えると場合によっては他の教員が代わりに教えてくれることがあります。これはどうしてもお願いしたい場合でなくても、積極的に聞いていただける場合が多いと感じています。

 授業の合間には休み時間と給食、清掃の時間などがあります。ここでは特に休み時間についてみていけたらと思います。休み時間と一概に言っても種類は様々です。授業間の5分間から10分間の休憩時間、二時間目と三時間目の間の少し長めの業間、給食の後の昼休みなどがほとんどの学校に共通のものだと思います。学校によっては曜日ごとに清掃のない日が存在し、その日は昼休みが長く設定されているなんていう場合もあります。

 ここで注意しておかなければならないのは、教員にとっての休み時間の立ち位置です。私の経験した学校では、業間と昼休みは教員の『休憩時間』として設定されている場合が多かったです。しかし、ここで問題が発生します。教員は業間と昼休みに休憩を取れているのでしょうか。

 私は初任の頃

「昼休みや業間は外で児童と遊んできなさい。」と管理職から職務命令を受けたことがありました。これは一般企業からすれば、「休憩時間だよね?じゃあ、〇〇会社に営業行ってきて。」や「休憩に入る?じゃぁ、皿洗いよろしく。」と同じだとイメージしていただければと思います。なぜならば、業間や昼休みでも児童のトラブルは起きますし、それこそ気を使って接さなければいけない児童への対応など明らかな業務だからです。

 さらには、業間に運動会の練習や昼休みに委員会活動などが設定されているなんてこともあります。休憩時間を教員に取らせる気がないのかと感じます。しかし、これは同時に児童にも不利益が生じています。業間や昼休みは児童にとっても休み時間です。それなのに運動会の練習や委員会活動などの授業のような内容を休み時間に強制的に行なわされるのですから、たまったものではないはずです。児童側からしたら、「休み時間に授業してるんだから、授業中に休み時間の気持ちで遊んでもいいよね?」と言う思考があっても別に不思議ではありません。

 坂本 良晶(2019.)の『さる先生の「全部やろうはバカやろう」』では、瞬間瞬間の最適解を見出し続けるという話の中で『子どもの休み時間の確保と教師の負担軽減があるのなら、目をつぶる局面だ』と言う考えを述べています。児童と教員の休憩時間を確保することは、児童の満足感も上がり、精神的な安定につながり、それが更なる負担削減になるという好循環が目に見えています。

 このように教員もそして児童にも適正な休憩時間が現在の学校には存在していないのが実情ではないでしょうか。労働基準法でも労働時間が6時間を超えるのであれば、少なくとも45分の休憩が定められています。それを平然とないものとして扱い、そこに仕事を入れている学校現場は健全とは程遠い無法地帯に成り下がっているのです。

 

 

参考文献 坂本 良晶(2019.),さる先生の「全部やろうはバカやろう」,学陽書房.

 

 

○個人でできるセルフ働き方改革① ~テストの丸付け~ Part 1

○個人でできるセルフ働き方改革① ~テストの丸付け~ Part 1

 

 教員の皆さん、テストの丸付けって案外大変ではありませんか?まず大きさ。小学校のテストは小学生でも書きやすいように大分大きめのサイズをしております。畳んで半分にしたくらいがちょうど良いですよね。ただ、ここで厄介なのが半分にすると枚数が多く膨らんでしまうということです。その上にバインダーなどを置こうものなら斜めになったずれ落ちてしまう。そして、見た目も最悪。机の上はぐちゃぐちゃ。しかも、移動するのも荷物になるし、個人情報てんこ盛りなので、下手な場所に置くこともできない。こんな厄介なものどうしたら……と思うものです。

 そこで私が始めた方法が「テスト即返却」という発想です。最初にその考えに出会ったのは初任の時でした。その時私は多くのテスト、ドリル、プリントの丸付けに追われ、机の上はぐちゃぐちゃで塔が立ち並んでいるような状態、もはや大都市でした。そんな私を見かけてその時の副校長先生が私に声をかけてくれました。

 「テストは職員室に持ってきちゃいけない。テスト中に丸を付けてしまうんだよ。」初任の私は言われた通りに丸を付けていきました。児童にはテストが終わって、見直しが終わったらテストを提出させ、そこから必死に丸を付けました。しかし、どう頑張ってもテストの丸付けはテストの時間内には終わりませんでした。それでもめげることなく挑戦し続けました。

 そして、もう無理なのではないかと半ば諦めかけた中である本に出会いました。坂本 良晶(2019.)の『さる先生の「全部やろう」はバカやろう』です。その中に

 「教師の丸付けも含めて、45分でやりきるという意識」という言葉が登場します。ここで私はハッとさせられました。私は心のどこかでテストの時間で丸付けも終わったら「いいな」と思って丸付けをしていました。丸付けが終わらずとも少しでも丸付けが進んでくれたらと思っていたのです。45分で丸付けも絶対「やりきる」という意識はなかったのです。それから意識を変えようと様々な取り組みをしていきました。

 まずは、意識をするために自分にタイムアタックを課しました。まずは一人目の児童がテストを提出したら、ゴングが鳴り、スタートの合図です。時計を確認し、スタートの時間を把握します。その後はひたすらに丸を付けていきます。最初はそれでも間に合わないことが多かったので、より細かいところまでこだわっていくようになりました。そのためのコツを私なりにまとめてみました。

①すぐに始める

 テストを開始すると机間巡視も必要です。しかし、それだけを行うのではもったいない。その間にドリルの丸付けや連絡帳の返信なども行いたい。そんな忙しなく仕事をこなしていると一人二人とテストを終えて提出をしている児童が現れます。そうしたら、今手をつけている仕事を区切りよく終わらせてからテストの丸付けに移りたくなります。しかし、それこそが罠なのです。優先順位を考えます。今本当に大切なことは連絡帳の返信なのか、テストの丸付けなのか。これは大変難しい問題です。連絡帳の締め切りは児童の下校時までの場合が多い。しかし、テストの丸付けは別に今日じゃなくても良い。ならば、連絡帳の返信の方が優先順位が高く感じるかもしれません。しかし、数日後でも大丈夫な仕事こそが、ずっとやらずに溜まる仕事なのです。しかも、連絡帳は内容にもよりますが、児童が近くにいても返信を書くことができます。五分十分の休み時間や業間、昼休みでも書くことは可能です。しかし、テストの丸付けは近くに児童がいてはできません。友達の点数が見えてしまうからです。だからこそ、今優先順位が高いのはテストの丸付けなのです。

 

 参考文献 坂本 良晶(2019.),さる先生の「全部やろうはバカやろう」,学陽書房.

 

 

○教育現場の現状は? Part 6 先生の仕事って?③ ~授業準備~

○教育現場の現状は? Part 6 先生の仕事って?③ ~授業準備~

 

 私が仕事をしながら大切にしていることがあります。それは、その業務にかかる時間がどのくらいなのかを把握、意識、そしてそこから改善を図るということです。例えばですが、本質的に時間のかかる業務と時間のかからない業務は存在しますが、いくら時間のかかる業務だからといって時間を短くできないかと言われれば、そうとは限らないと思うのです。ですから、様々な先生方や本、その他の情報からこの業務はもっと時間が短くできるか、むしろこの業務に時間をかけたほうが後々時短につながるかなどを考えながら日々の業務をこなしています。その中で教員の業務では珍しく適正な時間が公的に示されている業務があります。それは授業準備です。

 教員の授業準備に関しては、2021年、埼玉県の公立小学校教員の裁判の判決で授業準備は『1コマにつき5分間と認めるのが相当』と示されました。この判決に怒りを覚えた教員も多かったようですが、そうではないと思うのです。それが適正だとするのであれば、「無理だ。」ではなく、適正にして行く努力が必要なのではないかと思います。そこで私は4つの実践を行いました。

 一つ目は指導教諭にアドバイスを求めることです。授業公開時などに指導教諭に質問をすることができることがあります。私はその時に勇気がいることではあるのですが、思い切って質問をしてみました。以前から気になっていることで指導教諭のアドバイスには準備の時間が膨大にあることが前提の話が多いと感じていたのです。だから、その中で普段の授業では5分の準備時間で何を選択すればいいのかを聞いてみました。「私は普段ここまでなら5分でやっているのですが、5分ならばこちらを優先した方がいいということはありますか?」という具合に聞いてみましたが、

「これもやってほしいけど、5分じゃね……」といった5分という壁を考えてこなかったであろう返答が返ってきました。

 二つ目は日々の準備を5分でしてみることです。ここで気付いたことは理科などの実験系は5分では到底不可能だということです。であるならば、理科に15分かけるなら他の授業を3分などに圧縮することが求められるということがはっきりしました。

 三つ目は他の先生方の授業準備を真似するということです。しかし、これは難しかったです。やる部分すら把握せずに、その時の児童の意見から決めるという授業準備0派から授業準備を熱心に長時間かけて組み立てる派が別れていると感じたからです。

 四つ目は強制的な時間制限を設けることです。そこで編み出したのが、児童の朝の学習中にその日の授業準備を行うことです。朝の学習は15~20分程度ありますので、単純計算で5分の授業準備が3、4コマ分作ることができます。前日に理科や絶対に前もって安全面などの観点から時間をかけて準備をしないものをやっておいて、後は当日の朝に授業準備を行うことで絶対的な時間制限が設けられて、5分の制約を守らなければならなくなりました。これは我ながら画期的な方法と感じています。

 Oliver Burkeman(2022.)の『Four Thousand Weeks Time Management for Mortals』では『ホフスタッターの法則』として紹介されていますが、どんな仕事でも時間は予想以上にかかるものであり、余裕をもって計画すればするほど時間はかかってしまうのです。ですから、私は絶対的な終わりのラインを引く必要があると思うのです。

 

参考文献 Oliver Burkeman(2022.), Four Thousand Weeks Time Management for Mortals, VINTAGE.

     オリバー・バークマン(2022.),限りある時間の使い方,かんき出版.

 

○教育現場の現状は? Part 5 先生の仕事って?② ~朝の活動~

○教育現場の現状は? Part 5 先生の仕事って?② ~朝の活動~

 

 大体、8時10分か15分くらいになると朝の活動の時間になります。学校にもよりますが、曜日によって、読書や計算、作文の時間が割り当てられている15~20分ぐらいの時間が存在します。丁度この時刻ぐらいから教員の勤務開始時刻になります。この時間に児童は割り当てられた学習活動を行なっているのですが、私はその活動の中でも、読書には重点を置いていますし、避難訓練などの重要な伝達事項がなく、特にやるものも指定されていない場合は読書を優先して行うようにしています。もちろん、文章力の観点や感受性の観点から読書のよさを語る教員も少なくありませんが、わたしはそれよりも安定の観点から読書のよさに少し触れていきたいと思います。

 権藤 優希(2019.)の『心が強い人のシンプルな法則 ~ゼロから立ち上がれる人は、何をしているのか~』では、イギリスのサセックス大学の研究が紹介されています。それによると、読書をする人はしない人に比べてストレスが68%も低下するというのです。児童生徒も人間です。学校や家庭、友人関係などのストレスが学校での行動や授業中に出ることもあります。だからこそ、朝の学校の始めのタイミングで読書を行うことは昨日までの習い事や家庭でのストレスを少しでも緩和し、安定させる手段の一つになり得るのではないかと考えています。私の隣の学校の教員は朝読書をさせた日はクラス全体が落ち着いていることが多いと話していました。ぜひ、クラスが落ち着かないなと感じているのであれば実践してみるのも悪くないと思います。

 その間教員は机間巡視をしているわけではなく、朝の提出物や宿題の確認をしています。私のお気に入りの方法としては、この朝の活動の直前に行います。やることは3つです。

 一つ目は児童の様子確認と健康観察です。一日を平穏に過ごすためには朝の状態の確認が不可欠です。例えば、クラスのムードメーカーが今日は体調不良であるとか、トラブルメーカーが機嫌が悪いなどの一人一人の状態を把握することで今日の授業構成や活動内容を微調整することができますし、全員の前での体調確認では「元気です。」以外が言いにくいこともあるかもしれませんが、朝体調を確認して雑談をして様子や機嫌を見ておくことで大分その日の流れを考えることに役立ちます。

 二つ目は、提出物の回収です。個人懇談などの日程確認などの紙の回収を声かけします。理由は大きく三つあります。一つは忘れていた児童が思い出して保護者に確認しやすくするためです。二つ目は出し忘れ予防です。そして、三つ目が一番大切になのですが、しっかり受け取るためです。紙の紛失は教員の責任になってしまいます。昔、「提出したはずだ。」「提出されていません。」で大分大変な思いをしました。(最終的には児童のランドセルの奥底にあったのですが。)ですので、必ず名簿にチェックをしながら受け取り、その場でクリップで留めて、クリアファイルに入れるようにしています。

 三つ目は、宿題の確認です。受け取ったらすぐ丸付けをし、コメントを書くのではなく、その場で児童に声かけをしてしまいます。直接の言葉は児童にとっても嬉しいですし、コメントを書く時間も短縮できます。

 では、それも終わっているのに朝の活動中に私は何をしているのかと言えば、授業準備をしています。

 

参考文献 権藤 優希(2019.),心が強い人のシンプルな法則 ~ゼロから立ち上がれる人は、何をしているのか~,きずな出版.

 

 

 

○教育現場の現状は? Part 4 先生の仕事って?① ~勤務時間前~

○教育現場の現状は? Part 4 先生の仕事って?① ~勤務時間前~

 

 今回は先生の仕事って実際どんなものがあるの?ということについて話していけたらと思います。まず、最初に伝えておきたいのは、本当に先生の業務量は多いです。私の文ではよく登場する業務時間を最初に確認しておきましょう。 西村 祐二(2023).の『学校改革~「定額働かせ放題」と「ブラック校則」に挑む現役教師~』では、

 

“2022年度実施の教員勤務実態調査(速報値)によると、教諭の一ヶ月平均残業時間は、持ち帰り仕事時間を含めずに小学校64時間48分、中学校83時間44分、高校64時間52分(10~11月の調査結果を4週間換算した推計。持ち帰り仕事を含めた場合は、小学校82時間16分、中学校100時間56分、高校81時間)。調査結果から見える小中学校教員の日常は、毎日3時間以上の残業、30分以上の持ち帰り仕事、にもかかわらず一日を通した休憩時間はわずかに23分。”

 

とされています。では、小学校の教員の82時間も勤務時間外労働が発生する業務の内容はどんなものなのでしょうか。

 

 まずは朝からイメージしていきましょう。まずは朝、私は7時前くらいに出勤しています。ちなみに業務開始時刻の定時は8時10分からです。なぜ、こんな早いかって?理由は二つあります。

 一つ目は児童の登校時間です。児童は別に教員の勤務開始時刻が8時10分だからといってその時間に来てくれるわけでもありませんし、その時間より前には教室に来て大人しくトラブルを起こさないでくれるというわけでもありません。ですから、先に教員が教室にいたり、職員室にいて何かの時には対応できるようにしておきます。後から勤務時間前の教室で起きたトラブルを解決するよりその場で解決した方が大分時間の短縮になるので、結果的には働き方改革になってしまうのが不思議です。

 もう一つの理由は放課後の業務を減らすために片付けられるものはここで片付けておきます。例えば、何かの資料作り。保護者への配布文書や避難訓練などの行事の計画書作りは朝にやっておきます。放課後は教員も疲れていて頭が働かないこともありますし、児童指導の共有や保護者対応があって時間がない場合もありますので、できるときにやっておきます。放課後に作業をするより何倍も早く進みます。特にあまり遅くまで放課後残っていると不必要な手伝いを強制されることもあるので、朝片付けて早めに帰れるようにしておくのも大切です。私からすると「いらんやろ」という内容のちょこまかとした手伝いなど数え切れないほど学校にはあります。特に若い頃はなんでも手伝って当たり前だと思っている年配者も少なくありませんし、忙しいのを分かって気を使って声をかけない先生の作業を見つけると

「だめだよ、若いのは自分から見つけて動かないと。」と大声で言ってきてドヤ顔してくる年配者なども少なくありません。だからこそ、放課後はできるだけ早く帰ることが勤務時間短縮にはものすごく重要になってくるのです。

 また、登校したての児童の様子を見ながら、体調のチェックやいつもと変わったところがないかをコミュニケーションをとりながら確認したりします。

 

参考文献 西村 祐二(2023),  シン・学校改革~「定額働かせ放題」と「ブラック校則」に挑む現役教師~,光文社.